ヤマガラとエゴノキ|毒の実を両足ではさんで、種子をとりだす小鳥

霧雨の大台ケ原で枝にとまるヤマガラ(2026年8月) 雑学・野鳥図鑑

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公園を歩いていると、「ニーニーニー」と、鼻にかかったような声が聞こえてきます。

見上げると、オレンジ色のお腹をした小鳥。

ヤマガラです。

探鳥記録のなかでも、よく登場する鳥のひとつ。

それだけおなじみなのに、どんなくらしをしているのかは、あまり知らないままでした。

こんにちは、イソヒヨノートのハルです。

今回は、ヤマガラのことを、あらためて調べてみました。

冒頭の写真は、2026年8月大台ケ原で撮った、ヤマガラです。霧雨の中姿を見せてくれました。

✨ オレンジのお腹に、グレーのマント

ヤマガラは全長14センチほど。スズメと同じくらいの大きさです。

新緑の林で細い枝にとまるヤマガラ

目を引くのは、明るい茶色のお腹。オレンジがかった、あたたかい色です。

背中と翼の上面は、すっきりしたグレー。

まるでマントを羽織っているように見えます。

頭は黒と白のツートンカラー。

おでこから頬にかけて白っぽく、遠目にも「あ、ヤマガラだ」とわかります。

オスとメスは同じ色。見た目で性別を見分けるのは、むずかしい鳥です。

小笠原諸島をのぞく全国の林にすむ留鳥で、一年じゅう同じ場所でくらしています。

常緑広葉樹の林が好きですが、街なかの公園や住宅地でも会えます。

奈良の馬見丘陵公園、奈良公園など特別な山奥に行かなくても、身近な公園にいる鳥なんです。

この鳥のほかにも──
関西で出会える野鳥を、色や大きさから探せる索引ページを作りました。
野鳥図鑑インデックス|関西で出会える野鳥を色から探す

♪ 「ニーニーニー」は、あいさつの声

冒頭の「ニーニーニー」。

あれはさえずりではなく、地鳴きです。

地鳴きは、仲間との連絡や警戒するときに出す日常の声のこと。

ヤマガラの地鳴きは、鼻をつまんで出したような声です。

いっぽう春の繁殖期になると、ゆっくり「ツツピー、ツツピー」とさえずります。

日本のカラ類のなかでは、いちばんテンポの遅いさえずりだといわれています。

シジュウカラの「ツツピーツツピー」がせかせか聞こえるのにくらべると、ヤマガラはずいぶんのんびり。

☘ エゴノキの実は、毒入りのごちそう

そんなヤマガラの大好物が、エゴノキの実です。

写真は、2023年9月馬見丘陵公園で撮ったものです。エゴノキの実をクチバシでもぎとったようです。

馬見丘陵公園でエゴノキの実をくちばしでもぎ取るヤマガラ(2023年9月)

エゴノキは初夏に白い花を下向きに咲かせ、秋に小さな卵形の実を熟させる木です。

ところが、この実には毒があります。

果皮にふくまれるのは、エゴサポニンという成分。

口に入れるとのどや舌がヒリヒリするほどのえぐみ。果皮に含まれる成分、エゴサポニンの名前から「エゴノキ」という名前がついたといわれています。

昔の人はこの実を石けん代わりの洗剤に使い、地方によっては川に流して魚をしびれさせる漁にも使ったそうです。

そんな実を、ヤマガラは平気で食べます。

⛰ 両足ではさんで種子を取り出す

なぜ、毒のある実を食べられるのか、秘密は、食べ方にあります。

ヤマガラは実をくちばしでもぎ取ると、水平な枝や幹の二股まで運びます。

そして両足でぎゅっとはさみ、動かないように固定します。

馬見丘陵公園で枝の上で両足に実をはさむヤマガラ(2025年10月)

そこからは、くちばしで、毒のある果皮だけをていねいにはがし、中の種子だけを取り出して食べるのです。

馬見丘陵公園でエゴノキの実を両足で押さえて食べるヤマガラ(2025年10月・正面)

毒は皮に多く、種の中身は栄養たっぷり。種子だけを、道具も使わずに抜き取っているのです。

小さな職人が、目の前で仕事をしているようです。写真は、2025年10月馬見丘陵公園で撮りました。エゴノキの実をていねいに食べています。

✏ 食べずに、埋める

もっとおもしろいのは、ここからです。

ヤマガラは取り出した種子を、その場で全部食べるわけではありません。

かなりの数を、土の中や樹皮のすきま、木の根もとに隠します。

これを貯食といいます。

餌の少なくなる冬にそなえた、いわば貯金ですね。

隠し場所は、150メートルから500メートルも離れることがあるそうです。

おどろくのは、その場所をちゃんと覚えていること。

ヤマガラは学習能力が高く、記憶力のいい鳥。隠した場所を思い出しては、掘り返しに戻ってきます。

しかし──全部は掘り返せません。

食べ残されて土に埋まったままの種子は、そこで芽を出します。

果皮をはがされた種子は、皮つきよりずっと発芽しやすいのです。

つまりヤマガラは、実をもらう代わりに、種を遠くまで運んで植えている。

ヤマガラとエゴノキは、持ちつ持たれつの関係なんです。

☀ 春夏は虫、秋冬は木の実

ヤマガラの食卓は、季節で変わります。

春から夏、子育てのシーズンは動物食が中心。

葉のしげみにひそむガの幼虫などを、せっせと探します。

写真は、2024年4月馬見丘陵公園で撮ったヤマガラです。木の上で緑の幼虫を見つけたようです。

馬見丘陵公園で枝の上の緑の幼虫をさがすヤマガラ(2024年4月)

ヒナが大きくなるには、たんぱく質が欠かせません。やわらかい青虫は、この時期の最高のごちそうです。

秋から冬になると、今度は木の実の出番。

エゴノキやシイの実など、かたい実を両足ワザで割って食べます。

記録を月ごとに並べても、1月から12月まできれいに散らばっていました。どの季節でも、だいたい会える。

虫の少ない冬を、木の実と貯金でしのぐ。

ヤマガラの一年は、そんなふうにできています。

⭐ 縁日の「おみくじ鳥」だったころ

ヤマガラは、人にとてもなれやすい鳥です。

その賢さと器用さゆえに、昔は芸をする鳥として飼われていました。

平安時代にはすでに飼育の記録がありました。

有名なのが、江戸時代中期に流行し始めた、縁日のおみくじ引き。

ヤマガラが、お客さんから小銭を受け取り、賽銭箱にチャリンと入れる。

そして扉を開け、中からおみくじをくわえて持ってくる。

この芸は、明治から昭和初期にとくに流行し、浅草寺や神社の縁日の名物になりました。

けれど1970年代、鳥獣保護法で野鳥の捕獲・飼育が禁じられ、自然保護の考え方が広まるにつれて、芸をする鳥は姿を消していきます。

いまヤマガラに会えるのは、林の中だけ。

でも、それでいいのだと思います。

かごの中ではなく、エゴノキの枝で、自分の足で実をはさんでいる姿。

あれこそが、ヤマガラのいちばんの芸なのですから。

ちなみに、ヤマガラの野生での寿命は2年から5年ほどといわれています。

秋、公園や林で「ニーニーニー」の声がしたら、しばらく足を止めてみてください。

きっと近くにいます。

木の幹の二股のくぼみにとまるヤマガラ

両足で実をはさむ、小さな職人の仕事ぶり。

ぜひ、皆さんの目で、たしかめてみてください。

※記事の構成や表現の整理にAIを活用していますが、観察記録と写真はすべて自分たちで撮影・記録したものです。

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