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池の真ん中に、水草を積み上げた小さな島が浮かんでいました。
その上に、赤茶色の顔をした小さな鳥がうずくまっています。
しばらく見ていると、親鳥がふわりと立ち上がりました。
持ち上がった翼の下から、綿毛のようなヒナが顔をのぞかせたんです。
こんにちは、イソヒヨノートのハルです。
今回は、池や川で見かける小さな水鳥、カイツブリの雑学をご紹介します。
この鳥、あの琵琶湖の名前のもとになった鳥なんです。
✨ 「浮巣」は、じつは浮いていない
カイツブリの巣は、昔から「浮巣(うきす)」と呼ばれてきました。
水の上に浮かぶ巣。なんとも風流な響きです。
でも、水面をぷかぷか漂っているわけではありません。
ヨシや杭、水面に垂れた枝などに水草を絡めて、下から積み上げていくんです。
見えているのは、いちばん上のほんの一部だけ。氷山のようなイメージです。
ただし氷山とちがって、この巣は流されません。水辺の草にしっかり結びついています。
巣の大部分は、水面の下に沈んでいます。逆さにした円錐のような形になることが多いようです。
作り方はひとつではなく、水草に引っかけたようなものや、つなぎとめたまま水面に浮かんでいるものもあります。

調べてみて驚いたことがあります。
親鳥が巣を離れるとき、卵に巣材をかぶせて隠していくことがあるそうです。
白かった卵は次第に汚れて褐色になり、水草の色にまぎれていきます。保護色になって目立ちにくくなるんですね。
巣を留守にして、エサを取りに行っているあいだ、卵を守るための工夫なんです。
☘ カイツブリのプロフィール
まずは基本のデータをまとめておきます。
- 名前:カイツブリ(鳰)/カイツブリ科
- 全長:約26cm(カルガモの半分以下)
- 翼開長:約45cm/日本のカイツブリ類ではいちばん小さい
- 分布:本州中部より南では一年じゅう見られる。北日本や山地のものは冬に移動する
- 食べもの:小魚、エビやザリガニ、水生昆虫、貝など
- 得意技:足だけで泳ぐ。15秒ほど、深さ2mくらいまで潜る
- 巣:水草を積み上げたり、水草にからませたりしてつくった浮巣。卵は4〜6個で、1年に1〜3回産む
足には、カモのような水かきがありません。
指の一本一本に、木の葉のようなヒレがついています。弁足と呼ばれるつくりです。
翼は使わず、この足だけで水中を進みます。
♪ ヒナを背中に乗せて、そのまま潜る
カイツブリのヒナは、卵からかえるとすぐに泳げます。
それでも、まだ小さいうちは親の背中にもぐり込もうとします。
親鳥の背中に、数羽のヒナが並んで顔を出していることもあります。
そのまま羽の間にヒナを抱えて、泳いでいきます。
驚いたのは、その状態のまま潜ることがあるという話です。
背中にヒナを乗せたまま、水の中へ。ヒナは潜る準備はできているんでしょうか。ちょっと心配になります。でも泳げるので大丈夫なんでしょう。

抱卵は20〜25日ほど。オスとメスが交代でつとめます。
ヒナが巣を出るのは、生まれておよそ1週間後。
親から離れて自分で暮らすようになるのが30〜40日ほど。飛べるようになるのは、生まれて1か月半ほどたってからです。
奈良県にある公園で、この一部始終を見せてもらったことがあります。
巣の上には卵が残り、親鳥の背中からは数羽のヒナがのぞく。
卵とヒナが同時にそこにいる光景に、目がはなせませんでした。肉眼でも確認できますが、双眼鏡を使うと手に取るように観察できます。
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⌛ 自分の羽を、飲み込む
カイツブリの仲間には、ちょっと変わった習性があります。
なんと自分の羽を食べるんです。
ネコが毛づくろいのついでに毛を飲み込むのと、少し似ています。
ただ、ネコの毛玉はうっかりたまってしまうもの。カイツブリのほうは、わざわざ自分から食べにいきます。
カイツブリの仲間の胃は三つの部屋に分かれていて、飲み込まれた羽はそこで毛玉のような塊になります。
この塊がふたのような役割をして、食べたものが先へ進むのをゆっくりにする。
魚の骨やエビの殻といった硬いものを、時間をかけて消化するための仕組みだと考えられています。
飲み込んだ羽は、最後には口から吐き出されます。フクロウが、消化できない骨や毛を丸めて吐き出すのと同じです。あの塊を「ペリット」といいます。
いちばん古い記録は、16世紀のメキシコです。アステカの人たちが「この鳥は魚よりも羽ばかり食べている」と書き残していました。
ヨーロッパでこの習性が知られるようになるより、200年以上も早い記録だそうです。
昔の人も、首をかしげたんでしょうね。
⛰ 琵琶湖は、この鳥の名前で呼ばれていた
カイツブリという名前は、室町時代あたりから使われるようになった呼び方です。
「掻きつ潜りつ(かきつつぶりつ)」が縮まったもの、という説があります。
それ以前、この鳥は「鳰(にお)」と呼ばれていました。
「鳰」という字は、日本で作られた漢字です。中国にはありません。
水に「入」る「鳥」。
そして琵琶湖は、古くから「鳰の海(にほのうみ)」と呼ばれてきました。
それだけこの鳥が多かったということです。
滋賀県は1965年に、カイツブリを県の鳥に選んでいます。お土産には、鮎家の「かいつぶりサブレ」もあります。
万葉集にも登場します。
「鳰鳥(におどり)の」は、息長川にかかる枕詞です。
長く潜って、なかなか出てこない。その姿から生まれた言葉です。
にほ鳥の 息長川は 絶えぬとも 君に語らむ 言尽きめやも
息長川の流れがとだえることはあっても、あなたに語りたいことは尽きません。そんな歌です。
この息長川がどこを指すのかは、じつははっきりしていません。滋賀県の天野川とする説が知られていますが、かつて河内(今の大阪府東部)を流れていた川だとする説もあります。
詠んだのは河内の人、馬史国人(うまのふひとくにひと)。大阪市東住吉区の中井神社には、この歌の歌碑が立っています。
✏ 芭蕉も、浮巣を見に行きたがった
松尾芭蕉に、こんな句があります。
「五月雨に鳰の浮巣を見にゆかん」
梅雨の増水で、浮巣はどうなっているだろう。見に行ってみようか、という句です。
俳句の世界では、鳰は冬の季語、鳰の浮巣は夏の季語とされています。
同じ鳥なのに、季節がふたつに分かれているんですね。
冬は池に浮かぶ姿が目立ち、夏は巣が目を引く。
昔の人の見方が、そのまま季語になって残っているようです。
☀ 4年で120回。冬の池で会える鳥
カイツブリを記録した回数は、4年で120回。1月から12月まで、すべての月に記録がありました。
いちばん多いのは1月の22回、次いで12月の21回。
場所は馬見丘陵公園(奈良)が30回でいちばん多く、二上山山麓や大阪南港野鳥園でもよく会います。

公園の池で、小さな茶色い鳥がぽっかり浮かんでいたら。
少し待ってみてください。
すっと沈んで、しばらくしてまったく違う場所から浮かんできますよ。
その小さな鳥が、琵琶湖の名前になりました。
※記事の構成や表現の整理にAIを活用していますが、観察記録と写真はすべて自分たちで撮影・記録したものです。
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