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夏の終わりの林を歩いていて、ふと思うことがあります。
あの声が、もう聞こえない。
「ツキ・ヒ・ホシ、ホイホイホイ」。初夏の薄暗い森に響いていた、あの独特の歌です。
こんにちは、イソヒヨノートのハルです。
今回は、そろそろ日本を旅立つサンコウチョウのお話です。
名前の由来から、秋になると見つけにくくなる驚きの理由まで、まとめてご紹介します。
✨ 「月・日・星」と鳴くから、三光鳥
サンコウチョウは、漢字で「三光鳥」と書きます。
三つの光。それは、月と日と星のことです。
この鳥のさえずりは、前奏の部分が「ツキ・ヒ・ホシ」と聞こえます。そのあとに「ホイホイホイ」と続きます。
月・日・星、ホイホイホイ。
三つの光を歌う鳥だから、三光鳥。
昔の人は、ずいぶんロマンチックな名前をつけたものですよね。
ちなみに日本野鳥の会では、この声を「ピヨロピ、ホイホイホイ」と表記しています。実際に聞くと、その方が近いのかもしれません。
でも「月・日・星」と教わってから聞くと、不思議とそちらに聞こえてくるから面白いんです。
聞きなしというのは、そういうものなのかもしれません。
⭐ 学名まで「いい声」と「黒い尾」だった
サンコウチョウの学名は、Terpsiphone atrocaudata(テルプシフォネ・アトロカウダタ)といいます。
属名の Terpsiphone は、ギリシャ語の terps(喜ばせる)と phone(声)から。つまり「耳を喜ばせる声」という意味です。
atrocaudata は「黒くて長い尾の」。
声のよさと、尾の長さ。

この鳥の特徴が、そのまま名前になっているのです。
⛰ 昔の人も、あの長い尾に惹かれていた
長い尾を持つ鳥を、中国では「綬帯鳥(じゅたいちょう)」と呼びます。
綬帯とは、勲章を首から下げるための紐のこと。あの長い尾が、それに見立てられたわけです。
しかも「綬」は「寿」と、「帯」は「代」と同じ音。
代々、位に就きますように。長く生きられますように。
そんな願いを込めて、めでたい絵の題材として描かれてきました。
綬帯鳥は、サンコウチョウそのものではありません。
中国で綬帯鳥と呼ばれているのは、アムールサンコウチョウという別の鳥です。日本のサンコウチョウとは同じサンコウチョウ属の、いとこのような関係にあたります。
よく似ていて、長い尾がそっくりです。
こちらには全身が真っ白な個体もいて、絵の題材としてとくに好まれました。
ちなみに日本のサンコウチョウは、中国では「紫寿帯(しじゅたい)」と呼ばれています。
海のむこうでは、そっくりな仲間がめでたい鳥として描かれていたんですね。
この文化は、日本にも伝わっています。
江戸時代の画家・鶴亭(かくてい)が明和6年(1769年)に描いた「牡丹綬帯鳥図」という掛軸が、神戸市立博物館に残っています。満開の牡丹のかたわらに、長い尾の鳥が一羽。お祝いの品として贈られたものと考えられているそうです。
もうひとつ。
東京の浅草神社の拝殿にも、長い尾の鳥の彫刻が残っています。慶安2年(1649年)、三代将軍・徳川家光の寄進で建てられた社殿です。
この彫刻の鳥も「綬帯鳥」と呼ばれます。
「長い尾のめでたい鳥」なんですね。
そして現代。
サンコウチョウは、静岡県の「県の鳥」です。1964年、候補5種のなかから県民の公募でいちばん票を集めました。
サッカーJリーグ・ジュビロ磐田のマスコット「ジュビロくん」や「ジュビィちゃん」も、じつはサンコウチョウがモチーフなんです。
中国の吉祥画から、Jリーグのマスコットまで。
ずいぶん幅の広い鳥だと思いませんか。
♪ 声はすれども、姿は見えず
サンコウチョウに出会えたのは、この4年間でたった4回です。
香川県さぬき市の門入ダム、大阪城公園、そして奈良の春日山で2回。
そのうち姿を見られたのは、1回だけでした。2024年5月、大阪城公園です。
あとの3回は、すべて声だけ。「ツキヒホシホイホイホイ」独特なさえずりなのですぐにわかります。
なぜ、こんなに姿が見えないのか。
サンコウチョウが、スギやヒノキの茂る薄暗い林を好むからです。
木々の葉が空を覆って、日の光がほとんど届かない場所。そこを、するりと飛び回ります。
黒っぽい体は影にまぎれてしまい、目が慣れるころにはもういません。
「声はすれども姿は見えず」。なかなか会えないアカショウビンと同じタイプかもしれません。
森の鳥なのに、なぜ5月に大阪城公園にいたのか。
それは渡りの途中で、たまたま立ち寄っていたからです。
サンコウチョウは春に東南アジアから北上してきます。その道中、街なかの緑地にひょいと降りることがあるんです。
大阪城公園のような都会の公園が、渡り鳥にとっての休憩所になっているわけですね。
繁殖地の森で探すより、渡りの時期の公園のほうが出会いやすい。そんな鳥でもあります。
⌛ 秋のオスは、尾が短くなっている
さて、ここからが今回の本題です。
オスのサンコウチョウは、とにかく尾が長い鳥です。

全長はオスが約45センチ、メスが約17センチ。同じ鳥なのに、倍以上ちがいます。
もちろん体が大きいわけではありません。差はすべて、あの長い尾羽です。
体そのものはメスと変わらないのに、尾だけで30センチ近く。自分の体よりずっと長い飾りをつけて、飛んでいるのです。
ところが、この尾。秋にはなくなってしまうんです。
繁殖が終わると、長い2本の尾羽は抜け落ちます。しかも、渡りの前に自分で抜いているのではないか、とも言われているから驚きです。
理由を考えると、納得できます。
これから東南アジアまで、何千キロも飛ばなければいけない。あんなに長い飾りをつけたままでは、空気抵抗が大きすぎます。
命がけの旅の前に、美しい飾りを手放す。
これが「秋のサンコウチョウは見つけにくい」いちばんの理由になります。
あの長い尾がないと、シルエットがまるで別の鳥。暗い林で一瞬見えただけでは、まず分かりません。
もともとメスと若い鳥は、尾が短いです。
つまり秋のサンコウチョウは、オスもメスも若鳥も、みんな似たようなシルエットになってしまう。
さえずりもやみますから、声で気づくこともできません。
夏の終わりになると、サンコウチョウの長い尾羽が落ちていないか、さがしてしまいます。でも見つけたことはありません。
☘ そろそろ、南へ帰る季節です
サンコウチョウは5月ごろに日本へやってきて、9月から10月にかけて南へ帰っていきます。
越冬地は、東南アジア。
日本にいるのは、たった4か月ほどです。
子育てを終えて、長い尾を落として、帰っていく。
今ごろあの薄暗い林を、短い尾になったオスが、ひっそり通り抜けているのかもしれません。そして来年の5月、また「ツキ・ヒ・ホシ」を聞きに行きたい。
※記事の構成や表現の整理にAIを活用していますが、観察記録と写真はすべて自分たちで撮影・記録したものです。
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